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ウイルス性のイボ・その1
苫小牧の皮膚科医院 『たかはし皮膚科クリニック』、院長の高橋幸夫です。

今回から何回かに分けてウイルス性のイボ「尋常性疣贅」について書いてみたいと思います。
今日はイントロダクションです。

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※足の指に出来たイボ(尋常性疣贅)


●高校時代の思い出

「あれ?なんだろうこのオデキは?」

高校時代のある日、わたしは右足の人差し指に「ザラザラした硬いオデキ」が出来ているのに気がつきました。

当時のわたしは、函館のラ・サール高校という高校の寮で、寮生活をしていました。
お風呂は共同、毎日ルームメイトと同室の集団生活。
まさか、そのオデキがウイルス感染によるものとは思っていませんでした。

オデキは、痛みはないものの、徐々に大きくなっていきました。
そのうちに数も増え、数カ月後には5、6個くらいになったでしょうか。
無頓着なわたしもさすがに不安になってきました。

「全身、変なオデキだらけになったらどうしよう!」

ウルトラマンか何かに出てきた全身イボだらけの怪獣の姿が頭をよぎりました。
病院へ行くべきか、寮の先生に相談すべきか、実家の親に電話すべきか、と迷いましたが、なかなか行動する決心がつきません。

「そのうちなんとかなるだろう(そうであってくれ!)」

と思いながら、オデキのことから目をそむけて部活や試験勉強に没頭していました。
いまから思えば、あまり賢明な判断だったとは思えませんが、幸いなことに、オデキは自然と小さくなり、いつの間にか消えてなくなってしまいました。
小さくなりはじめてから、全部消えるまで1カ月もかからなかったと思います。

それがウイルス性のイボ(尋常性疣贅)であると知ったのは、10年程たって、皮膚科医になってからのことでした。
共同浴場で毎日のように素足になっていましたから、ちょっとした偶然からイボウイルスの感染したのでしょう。

「そうか、あのときのイボは自然治癒したのだな。何十個にも増えずに治ってくれて運がよかった」

北大で研修生活をしながら、10年前の出来ごとの「真実」を知り、ひとり納得したものでした。



●25年後のいま

皮膚科医になって15年。自分がイボを患ってから約25年。
いまでもイボの治療は悩みます。
過去の自分のように自然治癒があり得るからです。

一方で皮膚科でのイボ治療は、痛みのある「液体窒素による凍結治療」が中心です。
小さなお子さんに痛みのある治療を勧めておきながら、高校時代の自分は痛い思いをせずに治ったことに、かすかな申し訳なさを感じています。
(皮膚科医になってから何回かイボになりました。そのときは自分で自分のイボに液体窒素をあてました。確かに痛かったです。)

時間がかかるかもしれないが、自然治癒を頭の隅に起きつつ、痛みの少ない治療を選択すべきか?
治療に日数をかけている間にイボが伝染して増えることがないよう、痛くても強い治療を選択すべきか?
難しい決断の毎日です。

どのような治療法があり、それらをどのように選択するか。
次回から、そのあたりも含めて「ウイルス性のイボ」の対処法をお話していきたいと思います。


以上イントロでした。



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院内で配布している小冊子『尋常性疣贅って何?』


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[ 2011/04/05 13:20 ]

| ウイルス性のイボ(尋常性疣贅) |
ウイルス性のイボ・その2
苫小牧の皮膚科医院 『たかはし皮膚科クリニック』、院長の高橋幸夫です。

イボへの対処法を理解するうえでも、どのようにウイルス性のイボが生じるのか、そのメカニズムを知る必要があります。
今日はイボ発症の仕組みを解説します。

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※手の指に生じたイボ




●正常な皮膚
図1は正常な皮膚の模式図です。皮膚表面の薄皮である「角質層」があり、その下「有棘層(ゆうきょくそう)」があります。そのさらに下に「基底細胞層」という細胞が並んだ膜があります。
この基底細胞層の細胞(基底細胞、幹細胞)が皮膚の細胞の「おおもと」です。すべての皮膚はこの基底細胞が細胞分裂して出来上がり、徐々に変化しながら4週間から8週間で一番表面の角質層にまで移動し、最後は「アカ」となってはがれ落ちます。

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   ※図1 正常な皮膚




●亀裂が生じた状態
図2は皮膚に小さなキズが出来た状態です。目に見えないくらい小さなキズでも、基底細胞に達することがあります。

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   ※図2 傷ついた皮膚




●ウイルス感染
図3は、そのキズ口からヒト乳頭腫ウイルスが入りこみ、基底細胞に感染してしまった状況を描いています。
このウイルスは、皮膚と皮膚の直接接触、ドアノブ、タオル、コインや紙幣、おもちゃ、床面などを介した間接接触、すでに自分の皮膚に存在するイボからの自家接種によって感染すると考えられています。

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   ※図3 ウイルス感染した皮膚




●細胞分裂とイボの形成
図4はウイルスに感染した基底細胞が分裂していく様子です。ウイルス感染した細胞は正常な皮膚細胞にならずに、異常な角化を起こし、硬く盛り上がってゆきます。これが「イボ」です。
感染してからイボが盛り上がってくるまでの「潜伏期間」は「数週間」から「数年」と幅が広く、いつどこで感染したか分からないうちに、イボになっていることが多いようです。平均潜伏期間は3ヶ月といわれます。

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   ※図4 イボを生じた皮膚




●さらなる感染の拡大
図5は大きくなったイボからウイルス細胞がばら撒かれる様子を描いています。イボが複数ある場合、はじめの1つは他のヒトからの感染ですが、2つ目以降は、自家接種によって増えたものが多いとされます。イボの周囲の皮膚に新たなイボが出来ることは、よく見られる現象です。

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   ※図5 ウイルスを排出するイボ




以上、つたない図を交えながら解説させていただきました。
概略ですので、医学的に厳密でない部分はあると思いますが、おおまかな流れは理解していただけたのではないでしょうか。

次回、その3では発生の仕組みを踏まえて、治療法の解説に進みます。



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[ 2011/04/06 15:41 ]

| ウイルス性のイボ(尋常性疣贅) |
ウイルス性のイボ・その3
苫小牧の皮膚科医院 『たかはし皮膚科クリニック』、院長の高橋幸夫です。

ウイルス性のイボ(尋常性疣贅)の治療の解説に進みたいと思います。

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※黒い色調を帯びたウイルス性のイボ


●そもそも治療する必要があるのか? という疑問
イボは一種の感染症なので、治療しなくても免疫の力で自然に治ることがあります。
ある資料では、2年以内に65%から78%が自然治癒するとされています。(江川清文:最新皮膚科学体系15、中山書店)
しかし逆に言えば、治療しなければ2年たっても2割の人のイボは治らないことになります。
放置することで、さらにイボが増えたり、周囲の人に無自覚にウイルスをうつし続けることになるのです。
医師と相談して適切に治療することをお勧めします。


●イボの治療法
残念ながら「簡単」「短期間」で治る「特効薬的治療法」はありません。
もっとも一般的な治療である「凍結治療(冷凍治療)」でも数ヶ月かかります。
症状や生活状況にあった治療法を医師と相談して選択することが大切です。

以降、イボの主な治療法について解説します。
推奨度を高い順に、ABCの3段階で示しました。
ちなみにこの3段階の分け方は、わたしの個人的見解です。医療機関によって勧められる治療法は異なると思いますし、「絶対これが正解!」というものはないと思います。



■凍結治療(冷凍治療) (推奨度 A)
凍結治療とは、液体窒素を用いた治療のことです。
液体窒素とは窒素を冷却して液化させたもので、温度は窒素の沸点であるマイナス196℃です。
窒素は私たちが呼吸している空気の80%を占める気体で、蒸発した液体窒素を吸い込んでも全く害はありません。

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※液体窒素の容器と綿棒


この液体窒素を「めん棒」などに含ませてイボに押し当てます。
すると患部は急速冷凍されて白く固まります。めん棒を離すと、数秒から10数秒でイボはもとの色にもどります。これを数回繰り返すことで一回の治療となります。
液体チッ素で患部の細胞を冷凍することで、患部の組織にダメージを与えます。
また人工的に凍傷を起こすことになるので、患部の免疫力を活性化する作用があるとされます。
医療機関によっては、スプレー式の容器で液体窒素をイボに吹きかけることもあります。

一度の治療で完治することは少ないので、5日から7日に一度のペースでこの治療を繰り返します。
2週間以上間隔があくと、治療効果が乏しくなります。あまり間をあけすぎないほうがよいでしょう。

治療を続けていくと、イボがカサブタ状に変化しながら少しずつ脱落したり、徐々に縮小していきます。ときには水ぶくれになることもありますが、水ぶくれがカサブタになって脱落したときには、イボが一気に縮小することもあります。

治療回数、治療期間は、顔面や腕、脚などの皮膚の薄い部分なら二、三回。おおよそ半月くらいで治ることが多いようです。
手のひら、足のうら、爪の周囲のどの皮膚の厚い部分の場合、十回から十五回程度。つまり3ヶ月くらいが治療期間です。
しかし実際には個人差が大きく、手足のイボの治療に半年以上かかることもまれではありません。

◎長所
★どこの皮膚科でも受けることができる、標準的治療です。
★他の治療に比べ、比較的効果が高いとされています。
★イボの大きさ、治療効果をみながら強さを加減できます。

◎短所
★治療中、治療後に痛みがあります。
★通院回数が多く、通院期間も長くかかります。
★ときどき、患部が水ぶくれになることがあります。
★治ったあと、患部がタコのように硬くなったり、色素沈着、色素脱失が生じることがあります。
★まれに患部の免疫機能の変調から、イボがドーナツ状に増殖することがあります。

補足
治療中に水ぶくれを生じた場合は、無理に破らず絆創膏などで保護してください。
水ぶくれが腫れて痛い場合は、中の液を出すと改善する場合がありますので、皮膚科で処置を受けてください。
一般に、強めに液体チッ素を当てるのが効果的で早く治りますが、強めに当てるほど、痛みや水ぶくれが生じる割合が高くなります。
逆に軽めの治療では、さらに長い治療期間が必要になり、治療を完結できない方が増える可能性があります。



■スピール膏(サリチル酸絆創膏)貼付 (推奨度 B)
サリチル酸には皮膚の角質を軟化させる作用があります。
サリチル酸を含んだ「スピール膏」をイボに貼ることで、イボを軟化させ、はがれやすくすることが出来ます。
凍結治療などと組み合わせることもあります。

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※医療機関で処方されるスピール膏

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※スピール膏により白く柔らかくなったイボ


イボよりわずかに大きな形に切り抜いたスピール膏を患部に貼り付け、キズ絆創膏で固定します。
ずれたり、濡れた場合は貼り変えます。3日程度は同じものを貼りっぱなしで問題ありませんが、実際には入浴のたびに貼りかえることになるでしょう。
5日間程度貼り続けると、イボが白くふやけてきます。そのタイミングで来院していただきイボを削ります。これを繰り返すことで徐々にイボが小さくなります。

自宅で貼りかえる際に、イボがはがれそうなくらいふやけていたら、患者さん自身の手で多少イボをはがしてもかまいません。その場合はむきすぎて出血しないよう、また必要以上にイボに触れることで新たな感染を生じないよう注意しましょう。

◎長所
★凍結治療に比べ痛くありません。
★痛みを伴うタコ状、ウオノメ状のイボに貼って削ると、痛みを早期に取り除けます。
★イボかウオノメか区別しにくい場合の最初の治療として優れています。

◎短所
★大きな厚いイボを早く縮小させる反面、ウイルスに感染した基底細胞に作用してイボを完治させる作用は弱いと考えられます。
★ほぼ毎日スピール膏を貼り続け、数日ごとに貼りかえるわずらわしさがあります。
★スピール膏の厚みで圧迫されて痛みが生じる場合があります。
★スピール膏の成分が皮膚に刺激になって炎症を起こす場合があります。
★スピール膏を固定するテープでテープ負けを起こすことがあります。




■イボ焼灼術 (推奨度 B、 手足の場合はC)
電気メスや炭酸ガスレーザーでイボを焼き焦がし、除去する治療法です。
顔面、手足など強い痛みを伴う可能性のある部位のイボは、局所麻酔薬を注射して無痛状態にしてから行います。
痛みの少ない部分は麻酔なしで行うこともあります。

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※炭酸ガスレーザー

イボを電気メスや炭酸ガスレーザーで焼き焦がしながら除去します。
イボを除去したあとはキズになるので、抗生物質を含んだ軟膏を塗り、ガーゼなどで保護します。
皮膚が再生するまで、しばらく軟膏の塗布とガーゼ保護が必要になります。
また大きく盛り上がったイボに対して、イボの完全除去ではなく、イボの縮小を目的にイボ焼灼術を行うこともあります。

◎長所
★一度にイボを除去するので、うまくいくと一回で完治させることが出来る可能性がある治療法です。

◎短所
★イボを浅く焼くと再発する危険が高く、逆に深く焼くとキズが治るのに長い時間がかかります。
★肉眼的に完全に除去できたように見えても、比較的高い確率で再発してきます。
★治療後に色素沈着、色素脱失を生じる危険があります。
★まれにケロイドを生じることがあります。
★皮膚の厚い手足のイボに対して行うと、治療後のキズが深くなり、皮膚が乾くまでに一ヶ月以上要する場合もあります。また治療後、かなり強い痛みが持続することがあります。



以上、比較的多く採用される治療法を紹介しました。
次回は、これら主な治療法で改善が得られない場合の補完的、補助的治療法を紹介します。




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※スピール膏はОTC薬(大衆薬)としても販売されています。
 使用前に皮膚科医の診察を受けることをお勧めします。


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[ 2011/04/07 16:34 ]

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